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06 貼り紙の効果

LA SESTA PUNTATA  "I RISULTATI DELL'ANNUNCIO"

第6話 貼り紙の効果

ローマ市民の生活の足といえばバス である。
郊外を抜かせば実に200便以上があって、
それぞれに 一桁から三桁の数字が名前として付けられている。
どこから出発してどこに行くのか、どこに止まるのかを 把握する必要があるから、
観光客には難しいのだが、 自分の行動範囲を走る便さえ理解してしまえばラクである。
数本あるトラム (路面電車)も含めて75分乗り放題で0.77ユーロ。
2003年6月現在のレートでは100円ほどになろうか。
これでローマ市内を縦横無尽 に走れてしまうのだから、
日本のJR初乗り130円を考えたら安いものである。

しかしこれが当てにならない。当てにしてはならない。
バスは来ないこともある。

まず、時刻表がない
両折り返し地点にはあるが、普通のバス停では見たことがない。
いつ来るか分からない。
だいたい始発から時刻表どおりに運行しているかどうかも怪しい。
15分おきくらいには出てはいるから何とかなるのがほとんどだが、
来ない時は何の告知もなしに一時間待たされる こともある。

そしてストライキ である。
3ヶ月に一度くらいあるのだが、果たして従業員の待遇改善は
成されているのだろうか?
ちなみにローマのバスの経営は市によるものだから、
彼らは地方公務員 である。
ストライキの日は朝から夕方までほとんどの便が運行しない。

さらに交通渋滞 がローマにはある。
毎朝毎朝渋滞の列にハマって、車でご通勤の皆さんご苦労さんだなー、
と考えるが、そのわたしも渋滞の列にハマるバスの上なのだ。
何しろ朝と夕方は動かない。

2本のバスと1本のトラム(うまくいけばバス2本で済むのだが)を
乗り継いで通勤していたわたしは、こんな交通事情に耐えかねて、
あることを思い付いた。

自転車を買おう!

ある人はスクーター通勤 を勧めたが、日本でもその類のものには
手も触れたことがなかったわたし。勤務先までおよそ12kmの道のりを、
時には生徒と一緒に(わたしは私立高校で働いていた)
「チャリンコ通学」 していた。
その後、市内の美術館でアルバイトした半年間も自転車通勤。
ランス・アームストロング ほどじゃあないが、自転車こぎには自信がある。

ローマ南部の自宅から勤務先のホテルまでは5kmほどの距離である。
かつての12kmに比べたらおちゃのこサイサイ。
職場の従業員用の掲示板(情報交換のためにコルク板が設置されている)に、
どぎつい蛍光イエローの紙を貼った。文面は「自転車買います、まみ」

掲示したのは一週間ほどであっただろうか。
この間に社員ほぼ全員(30~40人はいる!)がこの件について
何らかの形でわたしに声を掛けてきた。
効果てきめん、さすがはおせっかいなイタリア人たちである。
ある人は「よし、俺に任せとけ」と言い、
またある人は「誰かに聞いておいてあげるね」。
中には今まで面識のなかった庭師さんまでが
「自転車探してるの?どれどれ僕が何とかしてやろう」と言ってきた
(彼もこの貼り紙を見て「MAMI」という外国人が
ここで働いているということを初めて知ったらしい)。

この手の人々はあまり当てにはしなかったのだが、
ある日突然ポーターのカルロが、
「うちにさー、自転車5台もあるからいらねえんだよ。
1台明日にでも持ってきてやるよ 」と言ってきたので
本気で驚いた。えっ、明日?しかもタダ?

しかし明日は来なかった
来る日も来る日もわたしは言い続けた。
「カルロー、自転車まだあ?」、
「いやあ、明日持ってくるよ、スマン」、
これが10回ばかり繰り返された。
持って来てくれることを宣言してから2週間が経っても、
彼が自転車を持ってくる気配は皆無 だったのである。

今回勉強になったこと。
バス運行といい自転車といい、イタリア人は当てにならない

(2003年6月)

(注) 2003年11月1日から市バスのチケットが値上がりし、 1ユーロ になってしまいました。

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